植物性食品の鉄分を効果的に摂取するには…!?

Saori Takashiro2021.01.10

日本の女性は鉄分が不足している傾向にあります。

 

日本人の鉄分の摂取は主に植物性の食品によるものですが、植物性の食品に含まれる非ヘム鉄の吸収率は様々な成分や調理法に影響を受けます。

 

今回は「非ヘム鉄の吸収率を高める方法」「非ヘム鉄の吸収率を下げないために気をつけること」をご紹介します。

 

 


 

非ヘム鉄の吸収率を高める方法

 


 

 

ビタミンC

 

非ヘム鉄は還元作用のあるビタミンCと一緒にとると三価鉄から二価鉄となって体内に吸収できる形になります。

 

ビタミンCを多く含むものといえば野菜(ブロッコリーや黄パプリカ、カボチャなど)や果物ですが、芋類にも意外と多く含まれています。

(しかもいも類に含まれるビタミンCは加熱しても失われにくいという特徴もあります。)

 

また野菜に含まれるビタミンCは季節によって量が大きく変動します。

 

ハウス栽培や輸入によって私たちはお店ではいつでもいろんな野菜や果物が買えますが、

できるだけ「国産で旬のものを食べる」ことでビタミンをより摂取することができますし、環境負荷も低くなります。

 

 

クエン酸

 

ビタミンCと同じく還元作用があります。

 

クエン酸は柑橘系の果物やレモン汁、酢、梅干しなどに多く含まれています。

 

鉄製の調理器具を使う場合も、酸味のある調味料を使ってじっくりと煮込むことで鉄の溶出量が高まります。

 

 

タンパク質・アミノ酸

 

タンパク質・アミノ酸は体内で非ヘム鉄と結びつくことで体内での吸収率を上げてくれます。

 

肉、魚、卵、乳製品、それらを控えている場合は豆類をしっかり摂りましょう。

(豆類については気をつけたい点もあるので後ほどお伝えします。)

 

植物性の食品からとることができる非ヘム鉄は吸収率が低いですが、食べ合わせや調理方法の工夫で吸収率を高めることができます。

次は鉄の吸収を邪魔する可能性がある栄養素や食品成分について解説します。

 

 


 

非ヘム鉄の吸収率を下げないために気をつけること

 


 

 

フィチン酸

 

玄米などの全粒穀物・インゲン豆やレンズ豆などの豆類・ナッツ類には鉄分と一緒にミネラル吸収を妨げる”フィチン酸”が含まれています。

 

フィチン酸の働きは「浸水・発芽・発酵・加熱」によって弱めることができます。

 

<対策>

・玄米や豆類はしっかりと浸水させてから加熱調理する

・大豆製品は納豆やテンペなど発酵されたものも積極的に選ぶ

 

 

タンニン酸やクロロゲン酸を含む飲み物

 

タンニン酸やクロロゲン酸などのポリフェノール類も、鉄の吸収を邪魔する成分です。

 

飲み物の種類や抽出時間によりますが、食事と一緒に飲むことで鉄の吸収が減少するとも言われています。

 

<対策>

貧血が気になる方は食事の前後30分~1時間は飲み物の選び方に気をつけてみてください。

タンニン・クロロゲン酸を多く含む飲み物には緑茶、紅茶、コーヒー、赤ワインなどがありますが、ビタミンCを多く含む飲み物では鉄の吸収率は下がりにくく、緑茶やレモンティーなどは影響が少ないようです。

 

 

シュウ酸

 

鉄分が豊富な野菜としてよく挙げられるほうれん草ですが、同じくミネラルの吸収を阻害する”シュウ酸”が多く含まれています。

 

シュウ酸は水溶性なので、ゆでで水気を切ることで量を減らすことができます。

 

しかし茹でることで一緒に鉄分も減ってしまい、実際に摂取できる鉄分は少なくなってしまうので「鉄分をとるためにほうれん草」は残念ながら効率的とは言えません。

 

 

カルシウム

 

カルシウムは、ヘム鉄・非ヘム鉄の両方の吸収を妨げる可能性があります。

 

ただしカルシウム自体は大事な栄養素なので控えるのはおすすめできません。

 

<対策>

貧血が気になる場合は乳製品やカルシウムのサプリメントは食事とは別のタイミングでとるようにしましょう。

 

 

鉄分まとめ

 

日本人の女性の鉄の摂取量は推奨量と比べて1日3~4mg程度足りていない傾向にあります。

 

また女性の鉄欠乏性貧血の原因は鉄の摂取量や動物性・植物性などの摂取源よりも月経による出血量の方が大きく影響を与えていることがわかっています。

 

鉄を不足させないポイントは

 

 ①まずは1日3食しっかり食べること

 

 ②鉄を多く含む食品を複数組み合わせて食べること

 

 ③鉄の吸収率を上げるポイントを押さえること

 

の3つです。

 

日々の食事を考える中でぜひお役立てください。

 

出典

1.宮崎由子,市販野菜中の還元型ビタミンC量の季節変動の統計解析,家政学雑誌,36巻 11号 p. 833-839

2.土井正子, 武藤静子, 貧血に関する研究一鉄鍋から溶出する鉄分について, 日本総合愛育研究所紀要, 14, 31-36.

3.今野暁子, 及川桂子,調理中に鉄鍋から溶出する鉄量の変化,日本調理科学会誌、36 巻 1 号 p. 39-44

4.文部科学省「日本食品標準成分表2015年版(七訂)

5.厚生労働省,日本人の食事摂取基準2020

6.国立研究開発法人 医薬基盤・健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報・鉄の解説(参照:2020.10.12)

7.Lonnerdal B. Calcium and iron absorption–mechanisms and public health relevance. Int J Vitam Nutr Res 2010;80:293-9. 

8.Lynch SR. The effect of calcium on iron absorption. Nutr Res Rev 2000;13:141-58.

9.Morck TA, Lynch SR, Cook JD (1983) Inhibition of food iron absorption by coffee. Am J Clin Nuts 37 : 416-20. 

10.小木間美保,若年女性のクエン酸第一鉄 ナトリウム製剤 からの鉄吸収に及ぼすアスコル ビン酸含有市販緑 茶飲料の影響,日本栄養 ・食糧学会誌 第54巻 第2号81-87(2001)

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